研究概要 |
本年度は、東北および関東の冷温帯林に分布する、短世代型生活環を持つサビキン10種を宿主植物ともども収集し、生植物に継代感染させながら、茨城大学教育学部に保存した。 そのうち、Puccinia,Uromyces,Kuehneola,Nyssopsora属の4種について宿主植物内の菌糸、胞子形成と胞子発芽および感染過程における核の行動様式を研究した。その結果、いずれの種も宿主植物内の菌糸細胞に2核を有し、前担子器(冬胞子)形成時に核融合して1核となった。この前担子器内の1核は、後担子器形成時に2回連続して分裂し4核となった。それぞれの核は、後担子器の4細胞に移行し、さらに後担子器細胞から形成される担子胞子に移行した。担子胞子内の1核はやがて分裂し2核となるが、発芽時または発芽管が宿主植物に侵入するまでに、そのうちの1核が消失する。宿主植物に侵入後、菌糸は直ちに2核化したが、この過程がどのようになっているのかは、観察できなかった。 本研究で観察したKuehneola属菌は、単担子胞子接種を行った場合もに、核の行動は上記の通りであり、単一核の担子胞子が宿主植物に感染後2核化し、やがて1核の前担子器を形成した。このことは本菌が形態的および核型的に有性生殖を行っているように見えるが、実際には有性生殖を行っていないことを示唆している。
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