研究概要 |
本年度は、北海道の冷温帯林および関東の暖温帯林に分布する、短世代型生活環を持つサビキンを研究対象とした。各地で採集した菌は、宿主植物とともに水戸(茨城大学キャンパス)で継代接種して保存・供試した。そのうち、Puccinia,Uromyces,Kuehneola属5種については、これまでの研究結果と同様であった。すなわち、宿主植物組織内の菌糸細胞は2核を有し、前担子器(冬胞子)形成時に核融合して1核となった。この前担子器(冬胞子)内の核は、後担子器(担子器)形成時に、2回連続して分裂(減数分裂)し4核となった。これらの核は、それぞれ担子胞子に移行したが、担子胞子内で再度分裂し2核となった。この2核担子胞子は発芽・感染時に1核となった。宿主植物への感染菌糸細胞は1核であったが、やがて宿主組織内菌糸細胞は2核になった。これに対して、AecidiumとUredoの3種は、これまでに考えられていたような、冬胞子世代(完全世代)をもつ生活環の一部を構成する不完全世代種ではなく、それぞれ形態的にはaecidiumおよびuredo型の胞子堆世代のみを持つ、短世代種であることが明らかとなった。これらの種では、胞子、胞子発芽時、宿主組織内菌糸、胞子形成時を通じて2核を有しており、生活環のなかで核融合・減数分裂を伴わない、栄養繁殖様式のみで繁殖することが明らかとなった。
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