1)最適栄養成長モデルと植物の適応戦略:茎の効果を組み込んだ最適生長モデルをもとに、貧栄養に適応しているといわれるイタドリ、富栄養に適応しているシロザの物質分配の評価を行った。イタドリの場合、貧栄養、富栄養どちらの条件でも、成長速度を最大化する物質分配よりも、多少根を大きくするような物質分配の制御を行っていた。一方シロザは、最低物質分配よりも多少地上部を大きくするような物質分配の制御を行っていることが明らかになった。このことは、イタドリは無機栄養(特に窒素)の確保に関して、栄養がより確保しにくい状況に陥った場合にもある程度の栄養生長を確保できるような物質分配様式を進化させてきたことを示唆している。一方シロザは、おそらく栄養の確保よりも光の確保を優先させた物質分配様式を進化させてきたことを示唆している。 2)根、茎の形成における水ストレスの影響:数理モデルを用いて、根と茎に関して水の輸送が形態形成の規範となり得るのかどうかを検討した。その結果、水の通導性のよい草本や落葉樹では水は形態形成の規範とはなり得ないことが明らかになった。これは、根の役割を無機栄養の吸収と考えてよいことを示唆している。 3)窒素固定の意義:窒素固定植物は窒素の回収をせずに落葉することが知られている。窒素固定植物であるヤシャブシを用いて、窒素の回収をせずに晩秋まで光合成を続けることの意義を実験的に明らかにした。対照としてはヤマグワを用いた。ヤマグワの窒素の回収が始まってから、ヤシャブシが寒波によって落葉するまでの間に、ヤシャブシは落葉する葉に含まれる窒素を固定するために投資したエネルギー以上のエネルギーを固定できることが明らかになった。したがって、窒素固定植物においては窒素を回収しないことに十分なベネフィットが存在することが示された。
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