[木本の物質分配戦略] 木本植物は、窒素について極端に肥沃な環境でも、最大光合成速度を草本ほど上げることができない。この原因として、木本植物の葉の構造的な問題が指摘されてきた。それは、「木本の葉では内部での二酸化炭素の拡散が遅い。これが制限要因となって光合成速度が上がらない。」というものであった。 我々はそれに対し、物質分配についての茎の効果を組み込んだ最適生長モデルをもとに、「茎の存在、根の性能など、葉以外の特性が制限要因となって、木本は最大光合成速度を高くしないように進化したのではないか。」という仮説を立て、それをテストした。材料としては、落葉樹であるヤマグワを用いた。 ヤマグワの根の窒素吸収能力は草本の1/4程度であった。また、窒素あたりの光合成量は草本とほぼ同じであった。これをもとに、モデルを用いてヤマグワの最適物質分配を求めた。その結果、ヤマグワはどんなに肥沃な環境であっても、最大光合成速度を15umole/m^2/sec.以上にはしないような物質分配法が、RGRを最大にする方法であることが明らかとなった。 このことは、少なくとも落葉樹においては、最大光合成速度が高くならないのは「高くしない方が生長速度を上げることが可能」だからであり、二酸化炭素の拡散の問題とは無関係であることが明らかとなった。 さらに、ウニコナゾール処理によって根を大きくしたヤマグワでは、30umole/m^2/sec.という高茎草本並の最大光合成速度を実現することができたが、この場合RGRは逆に小さくなっていた。このことも我々の仮説を裏付けるものであった。
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