マメゾウムシ-寄生蜂系を対象に、2種の寄生蜂のニッチ分化がどのようにカオスを生成するか、その機構を実験・数理モデル・時系列解析により解析した。分担者の津田は、寄主-寄生蜂実験系の個体群動態にあてはめる時系列モデルをDennis博士と共同開発した。このモデルはパラメーターの平均値だけでなく、信頼限界をブ-ツストラップ法によって推定することができる。この方法を嶋田の1寄主-2寄生蜂系のデータに適用し、嶋田の構築した齢構成モデルの動態特性と対照させて、統計的な予測からのモデル決定を行った。 また、嶋田は各ステージの寄主に対する寄生蜂の寄生効率を実験的に定量化した。これにより、寄主-寄生蜂系の日齢構成モデルに寄主ステージを分け合う寄生蜂のニッチ分化を取り込むことができ、どの要因がカオス発生を規定するかが予測可能となった。現段階では、2種の寄生蜂のニッチ分化による共存安定性と、一方の寄生蜂の寄生効率が高いことによる不安定効果の両方のバランスがカオスを生み出していると予測された。
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