研究概要 |
各地の植物上で潜葉虫の潜孔を採集し,そのさく葉標本を作成するという作業を繰り返した.潜孔内に潜葉虫が入っている時には,それを生かしたまま持ち帰り,飼育をして成虫または寄生蜂を羽化させた.調査地域は、本州各地から、奄美、沖縄、八重山、小笠原などの島嶼に及んだ。潜葉虫はまだ分類が終わっていない分類群が多く、潜孔とその成虫とを一致させた。小笠原のタコノキに見いだされた潜孔は、ナガキクイムシ科の成虫による潜孔であった。この潜葉虫は新族・新属・新種であり、これを記載した。これまでわかっていた葉の潜孔はすべて昆虫の幼虫によるものであったが、これは世界で初めての成虫の潜葉虫の記録である。またこの種の潜孔様式や行動についても調査した。タコノキはヤニを分泌して植食性昆虫から防衛しようとするが、この潜葉虫はいくつかの興味深い行動によって、それに対応をしていた。 潜葉虫のいくつかの種は寄主植物の化学防衛を抑制するような潜孔様式を持つが、それとおぼしき潜葉虫数種を発見した。それらの成虫を羽化させることに成功し、その潜葉虫の種を決定した。これらの行動様式を調査し、実際、葉の中で化学防衛物質がどのように変化しているかを高速液体クロマトグラフィーによる予備的測定を行なった。 さらに、個体数がたくさん得られる潜葉虫を使って、島嶼と本土における寄生率と寄生蜂群集の比較を行なった.スイカズラハモグリバエは申請者が長期個体群動態を調査してきた潜葉虫であるが,この潜葉虫の寄生蜂群集を都市近郊から自然林に至るさまざまな面積の残存植生で調査した.これまでのところ、自然度の高い里山環境において、寄生蜂群集の多様性が高く、都市化が著しい残存植生や、標高の高い植生において低くなっていた・
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