今年度も下北のニホンザルをついて調査を行い、個体群全体の近年の分布域拡大についての調査を行った(渡邊、三戸[研究協力者]、足沢[研究協力者]、松岡[研究協力者])。特に今年度は、下北半島全域についての集団調査が行われ、ほぼその全容を明らかにすることができた。全体の個体数としては17群732頭が確認されているが、今年になって半島中央部の湯ノ川温泉近辺にまで行動域を広げている群れが見つかるなど、なお全体としての分布域拡大は続いている。下北半島西北部の群れは行動域が広く、一方南西部の群れでは狭い。そして北西部の群れは、採食品目が非常に選択的であり、南西部の群れでは多様なものを採食しているという報告がある。それを裏付けるための調査が開始された。宮崎県幸島の群れは、1972年以降約30haの島内に100頭前後が生息するという状態が定常的に続いている。毎月継続的にほぼ全個体の体重が計測されており、そのデータを基に30年間の幸島のサルの体重変動が分析された。それによれば、1970年以前の大量に餌を与えていた時期と比較すれば、体重の減少は明らかであるが、その後一定の体サイズ減少でほぼ落ち着いた状態にある。成長の遅延、若年の死亡増ということでも同様で、ほぼ安定した状態を保っている。細部での違いが、個体間の順位との関係で分析された。屋久島の個体群では、西部林道地域で大量の自然死がおこっていることが確認された。
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