研究概要 |
繊毛虫類がもつ防御物質の構造と機能について研究を進めている。 1. ブレファリズマ(Blepharisma japonicum)のもつ色素ブレファリズミン(blepharismin)の構造と毒性------ブレファリズマは毒性のある色素ブレファリズミンを含む色素顆粒をもち、捕食性繊毛虫に攻撃されると、この色素顆粒を放出して防御する。ブレファリズミンの推定構造式は平成9年度に発表された。この構造式を基礎に、現在、有機化学的合成法を検討している。また、酸素と光存在下でブレファリズミンから生じるオキシブレファリズミン(oxyblepharismin)を精製し、ブレファリズミン、ヒペリシンと共に繊毛虫に対する毒性、光毒性について調べた。ブレファリズミン、オキシブレファリズミン共に毒性、光毒性があることがわかったが、これらの色素の特徴は、強い内在的な毒性にあると考えられる。 2. クリマコストマムのもつ防御物質の構造と毒性------ブレファリズマと同じ異毛類に属するクリマコストマム(Climacostomum virens)は、これまでのところ、防御のための放出体を有しているという報告はないが、捕食性繊毛虫ディレプタスなどに襲われた際、クリマコストマムが逃げる行動を示すことから、何らかの防御物質をもっていることが示唆されている。クリマコストマムの抽出成分から、ディレプタスへの致死毒性を指標に、この物質を探索、単離した。NMRなどを用い構造解析を行った結果、この毒性物質は、1,3-dihydoxy-5-[(Z)-2'-nonenyl]benzeneで、新規の化合物であることが分かった。この物質をクリマコストールと命名した。さらに、このクリマコストールの合成法を確立した。このクリマコストールが、実際に生体内で防御物質として機能しているがどうか、また毒性の作用機構などを調べることが今後の課題である。
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