研究概要 |
ヨウジウオ科とテンジクダイ科魚類は性役割の逆転した代表的なグループである。これらの魚類では、一匹の雌から受け取った卵を孵化するまで雄が体外、育児嚢または口内で保護する。保護期間がかなり長期にわたるため、雌が1 clutchの卵を作りだすのにかかる時間よりも雄が一回の保護を完了するまでの時間の方が長くなっている。そのため、大多数の魚類とは反対に、雌の繁殖成功は雄のavailabilityによって制約を受けている。 われわれの研究室では、四国宇和海を拠点としてこのような魚類の生活史・繁殖生態を継続的に調査している。オオスジイシモチにおいてはこれまで4年間調査枠内の全個体を識別し、個体ごとの成長、移動、繁殖経歴などの詳細なデータを得た。また,オオスジイシモチ以外のテンジクダイ科魚類についてもかなりのデータを蓄積することができた。これらのデータから、成長様式,年齢・体サイズと繁殖成功の関係、繁殖戦略の年齢・体サイズによる変異、配偶者の交代とそれに関わる要因がかなり明らかになった。また、オオスジイシモチにおいては、雄親のフィリアルカニバリズムが生活史戦略の一環として起こっていることを実証的に示した。さらに,体の各部の脂肪,蛋白質,炭水化物含有量を測定することによって,雄の口内保育とフィリアルカニバリズムに関与するエネルギー的基盤についても予備的に検討した。イショウジについては2年間野外調査から,連続的な一夫一妻制の強いペア・ポンドをもつことを明らかにした。
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