研究概要 |
本研究の目的は、樹木個体群の構造と機能量の変化を、その推定方法を開発し、過去数十年以上にわたって復元することである。特に、針葉樹の単純同齢林に着目し、林分の個体密度、個体の器官別現存量、個体の成長量とその分布などを、経年変化も含めて推定する。これら諸量の復元には、極力フィールドから得られた生データを用いる。また、枯死・分解などによってすでに消失してしまった量の推定は、方法がなく、これまでほとんど試みられていない。本研究では、これが可能であることを具体的に示す。また、復元された構造と機能量の変化を用いて、気候温暖化がこれまでに森林生態系に及ぼした影響の評価ができるようになる可能性を示す。 単純同齢林の個体の現存量分布関数としてHozumi,Shinozaki & Tadaki(1968)の-3/2乗分布を仮定し、また、林分内の最大個体から15番目くらいまでの木の胸高の年輪データを用いることにより、過去のサイズ分布の係数が決定できることが分かった。すでに個体群から消失してしまった木のサイズと頻度を含めて復元が可能である。さらに、複数の個体の樹幹解析データからstem slenderness indexと呼ばれる係数の値を過去の任意の時刻について計算することにより、過去の個体密度、器官別現存量、個体群の全幹材積、個体の成長量とそのサイズ分布などを推定する方法が開発された。今後は、過去の測定データが存在する林分の構造復元を通して、この方法の精度を確認する作業が望まれる。
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