1. 和歌山県白浜町の京都大学瀬戸臨海実験所付近の岩礁で、二枚貝床群集と海藻マット群集内の主要構成種を四季にわたって採集し、その消化管内容物を分析した。この調査は、前年度に引き続いて行ったもので、主要構成種の季節的な変動は、前年度とは異なるパターンを示した。昨年度には冬季に量的に多くなった多毛類のセグロイソメとウスズミゴカイの両種が、今年度の冬季にはかなり少なく、一方、等脚類の密度が前年度に比べてかなり増加していた。この原因は不明であるが、冬季の気温・水温の違いが2年間の主要構成種の量的変異をもたらしていた可能性が考えられた。 2. 実験室内で、各生物の摂食行動をビデオ撮影した。その際、二枚貝の殻の上にEpifaunaを付着させたものに対するセグロイソメの摂食行動が、Epifaunaのない二枚貝に比べて有意に減少することが明らかとなった。二枚貝の殻の上のEpifaunaの存在が、捕食者から攻撃される確率を低くしていることが推察された。また、ファイバースコープを用いた観察によって、二枚貝床の中に住み込んでいる等脚類や多毛類の詳細な行動が明らかとなった。 3. 二枚貝床群集の地理的な変異を調べるために、宮崎県と沖縄県に存在するイガイ科二枚貝2種(ムラサキインコガイとヒバリガイモドキ)の二枚貝床群集を調査した。宮崎県では、和歌山県白浜町のものと大変に似通った群集が見られたが、沖縄県のヒバリガイモドキ床では二枚貝の密度が大変に低く、内在生物の種数も密度も大変に少ないことがわかった。沖縄県でヒバリガイモドキ床の二枚貝の密度が低く、稠密な床を作らない原因を探るための調査を来年度は実行したい、と考えている。種の違い、あるいは亜種の違い、という分類学的な分析も必要になってくるかもしれない。
|