研究課題/領域番号 |
09640760
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研究機関 | 国立極地研究所 |
研究代表者 |
伊村 智 国立極地研究所, 研究系, 助手 (90221788)
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研究分担者 |
菓子野 康浩 姫路工業大学, 理学部, 助手 (20221872)
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キーワード | アイスアルジー / 珪藻 / 光合成 / 光化学系 / チラコイド膜タンパク質 / 光強度順応 / Rubis CO / クロロフィルa |
研究概要 |
これまでの研究で、常温性のアイスアルジーである珪藻Chaetoceros gracilisの色素系の変化をとらえることはできたが、タンパク質レベルでも同様に変化しているのかどうかを明らかにするために、電気泳動によりチラコイド膜タンパク質の相対的な量の変化を分析することを試みた。 生育光強度を変えて培養したCh.gracilisの電気泳動像から、光強度の変化にしたがって増加するポリペプチドバンドや減少するポリペプチドバンドなど挙動の異なるポリペプチドが複数存在することが明らかとなった。特徴的な変化を示したこれらのポリペプチドバンドを、N末端アミノ酸配列の分析、免疫染色、ヘム染色などを行って同定し、系I、系II、LHC、Rubis COなどについてのマーカータンパク質を設定した。これらの変化は、CBB染色の結果だけでは、本来の変化が隠されてしまう可能性があるため、免疫染色やヘム染色も併せて行い、信頼性を高めた。 その結果、生育光強度が変化すると、Ch.gracilisは光化学系のタンパク質の相対量を変化させてその光強度環境に順応するだけでなく、炭酸固定系の酵素の量まで変化させていることが明らかとなった。Rubis COは、単位タンパク質量あたり、および、単位クロロフィルa量あたりどちらの場合においても、その相対量を大きく減らしていた。Ch.gracilisは弱光下では、光エネルギーを獲得することを優先してその光強度条件に順応していると言えよう。 Ch.gracilisは弱光下では、より多くの光エネルギー獲得のために光化学系のタンパク質(とくに系IIとLHC)を合成することにより多くのエネルギーを費やし、さらにその中でも系IIへの配分が特に大きいことが明らかになった。
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