昨年までの研究により、シロイヌナズナ種皮の隆起構造から分泌されるレピジモイド様物質はケイトウ胚軸のみならずシロイヌナズナ自身の胚軸伸長に対しても成長調節物質的な促進作用を示すことが明らかになった。 本年度は種皮部分以外の植物体、すなわちロゼット葉、茎、花序、根などの成長中の器官にレピジモイドが含まれるかどうかを検討した。1998年5月、露地栽培で生育した植物体を採取し、根、ロゼット葉、茎+花序の3部分に分け、液体窒素中で粉砕した後、熱水で抽出した。この抽出物を限外濾過により各分子量分画を得、分子量3000以下の分画で生物検定を行ったところ、供試した全ての器官でレピジモイド活性が認められた。次に、これら3器官の試料を二相分配、逆相分配、陽イオン交換、陰イオン交換、限外濾過(モル)等によって精製し、HPLCによって分析を行った。その結果、3つの試料すべてについて合成レピジモイドと同じ位置(保持時間)にピークが認められた。また、このピーク部分を分種し、ケイトウ試験を行ったところ、3器官からの抽出物ともレピジモイド活性が認められた。このことにより、成長中のシロイヌナズナのロゼット葉、茎、花、根などの各器官にもレピジモイドが含まれることが分かった。 本年度の結果から、次の課題として成長中の植物体が生成するレピジモイドが自分自身に対し、どのような成長調節的役割を果たしているかについて検討を行う予定である。
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