研究概要 |
昨年度までの研究により生育中のシロイヌナズナのロゼット葉,茎,花序,根などにもレピジモイドが含まれていることが分かった.そこで,本年度はシロイヌナズナを用いて(1)ケイトウテストで見られたレピジモイド効果の二面性(胚軸で成長促進,根で成長阻害)がシロイヌナズナでも見られるかどうか,(2)レピジモイドに対する反応性の系統間差異,について調べた. ロゼット葉から熱水抽出し,分子量3000以下の分画から粗レピジモイドを調製し,次の実験を行った.(1)粗レピジモイドを寒天に溶かし,その上にシロイヌナズナ種子を播いて生育させ,芽生えの成長を観察,測定した.その結果,1000mg/1の濃度のレピジモイドによって胚軸では伸長促進と肥大成長が,子葉では拡大成長が,根では伸長成長の阻害が認められた.このことから二面的効果はシロイヌナズナでも見られることが確認された.根においては主根の成長がほとんど起こらず,多数の側根が胚軸の基部から分化した.(2)粗レピジモイドをシロイヌナズナ野生型26系統に与え,明所および暗所における芽生えの胚軸,子葉および根の成長を測定した.その結果,明所では胚軸伸長が促進された系統が4つあった.これらでは子葉の拡大成長も促進された.また,これらのうち根の成長が著しく阻害されたものが2系統あった(UK-1とIn-0).暗所では胚軸成長が促進された系統は認められなかったが,根の伸長が阻害された系統が4つあった.このうち1つは明所での促進と阻害も大きいものであった(In-0).このことからレピジモイドヘの反応は地上部の促進,地下部の阻害ともに著しい系統間差異があること,また,その中でIn-0系統が最も高い反応性を示すことが分かった.
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