根の重力屈性は、植物生存上、最も基本的な環境適応戦略である。その重力信号伝達系で、最近、根冠アポプラストにおける遊離型Ca^<2+>の動向が重要視されている。しかし、遊離型Ca^<2+>がどのようにして屈曲を誘導するかは明らかになっていない。原因の一つは、組織間信号伝達物質が同定されていないためである。本研究は、組織間信号伝達物として我々が候補して考えている拡散性1AAを中心に次の4点、(1)重力刺激と拡散性1AAの動向、(2)その動向に及ぼすCa^<2+>の影響、(3)重力刺激と拡散性1AAの源泉としての細胞壁結合型1AAの動向、(4)結合型1AAと非結合型1AAの可逆反応に及ぼすCa^<2+>の影響、について調べ、重力信号伝達系におけるアポプラストでの1AAの可逆的代謝反応の関与を明らかにすることを目的とした。 1AAは、我々が考案したインドロ-α-パイロン法と蛍光検出フローインジェクション分析法を組み合わせた微量高感度測定系により定量した。トウモロコシの一次根を材料にした研究の結果、(1)重力刺激により拡散性1AAが根端から伸長域へ極性移動する、(2)この求基的な極性移動はCa^<2+>により制御されている、(3)重力刺激により根冠細胞壁中の結合型1AA含量が減少する、(4)根冠細胞壁中の結合型1AA含量がCa^<2+>により制御されている、ことが明らかになった。 これらの結果は、根の重力屈性の重力信号伝達系に根冠アポプラストにおける1AAの結合型から非結合型への可逆的反応が存在している可能性及びこの可逆的反応がCa^<2+>により制御されている可能性を示唆している。現在、この1AAの可逆的反応におけるCa^<2+>の機能解析について計画中である。
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