1. 野生型酵母のECT遺伝子を破壊した変異株INY104(MAT a CHO1Δ::HIS3 ECTΔ::LEU2 /YCpGPSS)を単離するために、ECTΔ::LEU2遺伝子断片を作成し、酵母INY102B(MAT a CHO1Δ::HIS3leu2/YCpGPSS)を形質転換したが、遺伝子破壊株の遺伝子破壊が培養過程で復帰することがわかった。なぜ、ECT遺伝子の破壊が不安定であるのか、その理由はまだわからない。最近になり、Arabidopsisゲノムデータベース中にECTと相同なDNA塩基配列が公開された。そこで、この塩基配列(Accession No.g3786005)を参考にして、シロイヌナズナcDNAよりECTcDNA候補クローンをPCRにより単離した。 2. INY102B(MAT a CHO1Δ::HIS3/YCpGPSS)をナタネの根由来のcDNAライブラリーで形質転換したところ、グルコース培地でも生育可能な株が100株単離された。このうちの16株について塩基配列を決定した。その結果、これらはすべて、グループ2型アミノ酸脱炭酸酵素であるヒスチジン脱炭酸酵素と高い相同性を示すことがわかった。ヒスチジン脱炭酸酵素は、ヒスタミンを合成する酵素であり、本研究によりはじめて、植物の根でヒスタミンが合成される可能性が示唆された。 3. ナタネCCTを遺伝子導入した形質転換シロイヌナズナを14系統作出した。このうち一系統について、脂質組成とシロイヌナズナの凍結に伴う電解質の相対溶出率を指標にして、凍結耐性を調べた。CCT61系統は、コントロール(GUS7系統)に較べて、ホスファチジルコリンとホスファチジルエタノールアミンのレベルが低下していた。50%の相対電解質溶出率を示す温度は、野生型シロイヌナズナでマイナス6℃、CCT61でマイナス7℃、コントロール形質転換植物でマイナス7℃であった。
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