研究概要 |
1.単細胞原始紅藻、Cyanidium caldarium RK-1株の核ゲノムからクローン化した3種の葉緑体RNAプリメラーゼシグマ因子遺伝子(sigA,sigB,sigC)のうち、sigBおよびsigCは極めて相同性が高く、殆ど同一の遺伝子産物をコードすると考えられる。このため、sigBとsigCを区別することは不可能であったことから、sigA遺伝子とsigB(and/or)sigC遺伝子の発現についてmRNAおよび蛋白質レベルでの解析を行った。ウェスタン解析に用いた抗体は、それぞれの遺伝子物産を大腸菌内で過剰発現させた蛋白をウサギに免疫することによって得た。C.caldarium株の培養は12時間ごとの明暗周期を3日連続し、その後の24時間について6時間ごとのサンプリングおよび試料調製を行った。解析の結果、sigA遺伝子が比較的明暗周期によらない発現パターンを示すのに対し、sigB/sigCの発現は明期にのみ強く観察された。従って、sigA遺伝子は葉緑体で光によらず発現している遺伝子の転写。sigB/sigCは光に依存した発現を行う遺伝子の転写に関わることが示唆された。 2.大腸菌内で過剰発現させたsigA,sigB,sigC遺伝子物産について、大腸菌RNAポリメラーゼのコア酵素との再構成実験を行い、大腸菌のコンセンサス型プロモーター群を用いたin vitroの転写実験を行った。その結果、3種の遺伝子物産が実際にシグマ因子の活性を持つこと。および、それらの転写特異性が比較的類似したものであることが強く示唆された。生体内における機能については、Cyanidium細胞から調整したRNAポリメラーゼコア酵素を用いた実験が必須である。
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