研究概要 |
SynechocystisPCC6803のcotAをプローブとしてSynechococcusPCC7942cotAを単離した。両らん藻株についてcotA欠損変異株を作製し解析した結果、光照射下におけるプロトン放出能を欠いていた。これらの結果からcotAがプロトン交換に直接関わっていることが明らかとなり、従って遺伝子名をpxcA(ProtoneXChange)と改名した。pxcAの一部を大腸菌内で発現させて得られた蛋白に対して作製した抗体を用いたウエスタン解析によって遺伝子産物が細胞質膜に存在することを証明した。一方、両株のpxcAのキメラ遺伝子を作製し、SynechocystisPCC6803のpxcA^-変異株に導入したところ、C端領域を取り替えた遺伝子は完全に変異株を相補したが、N端領域がSynechococcusPCC7942遺伝子である場合は弱い相補力を示した。PxcAはATP結合部位をもたないことから、2つの可能性が考えられる。1)PxcAはATP結合部位をもつプロトン輸送体と複合体を形成している。この可能性を明らかにするためにプロトン輸送体様遺伝子を不活性化した変異株を作製しつつある。2)PxcAはプロトン輸送体であるが、ATPによって駆動される他のイオンの輸送と共役しで駆動される。pxcA欠損がCO_2,HC0_3^-およびNO_3^-取り込みに及ぼす影響について総合的な解析を行った結果、酸性領域または低Na^+下ではCO_2およびNO_3^-の取り込みを大きく阻害した。PxcA依存性のプロトン交換は物質輸送の際の細胞内pHや電荷の恒常性を保つ上で重要な働きをしていると考えられる。
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