ササゲ胚軸切片の伸長生長は、浸透ストレスにより阻害されても、IAA存在下では15分後には回復を始め、1時間もすればほぼ完全に回復する。浸透シグナルとしてABAの関与を示すデータを得たが、解析を進めるうちに再現性が怪しくなった。ABAの光学異性体、胚軸の生理条件などの条件を変えて再現を試みたが果たせず、ABAがストレスシグナルとして関与していることを明に出来なかった。この間に、胚軸の伸長快復に必須な細胞壁の伸展の再開が、壁展性ではなく駆動力である実効膨圧の適応回復よることに気づいた。実効膨圧は膨圧と臨界降伏圧の差であるため、プレシャープローブによる細胞内圧の連続直接計測にプレーシャージャンプ法を併用して生理的細胞壁降伏パラメーターの変化を追跡した。0.17MPaの浸透ストレスに対して細胞内圧は減少して低い値で安定化し、生長回復に対応する増大はみられず、実効膨圧の適応回復は臨界降伏圧Yの調節によることがわかった。Yは早い時期に細胞内圧より約60KPa低い値に調節されており、細胞内圧を動作点とするバイアス制御型の調節であることが推定された。 一方、ササゲ伸長域胚軸切片から抽出精製された酸誘導の臨界降伏張力調節タンパクyieldinもストレス適応時におけるY調節に関わっている可能性が高い。そこでこのタンパクのcDNAクローニングを行い、塩基配列解析して遺伝子の同定をおこなた。ついで、大腸菌で発現させた組換えyieldinの生理活性をしらべた。組み換えyieldinはnative yieldinと同じ臨界降伏張力の調節能を有することがわかった。
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