本研究では、光合成細菌Rhodobactercapsulatusのニトロゲナーゼ系でフェレドキシンの還元を司ると考えられる新規なエネルギー変換酵素であるRnf複合体ファミリーについて、1)R.capsulatusRnf複合体の物性解析、2)Rnf複合体の相互配置の解析、3)大腸菌mfホモローグの機能解析、を行った。 1) ペンシルバニア大学の大西教授との予備的な共同研究により、Rnf複合体の[4Fe-4S]クラスターに由来するg=1.84のEPRシグナルを検出した。このシグナルの酸化還元電位は-420mV以下と低いが、Rnf複合体に含まれる4個以上の[4Fe-4S]-クラスターのうち、最も酸化還元電位の高い表在性のものと考えられた。より詳細な電子移動解析は、複合体II(コハク酸-キノン酸化還元酵素)由来の巨大なシグナルに阻まれ、困難であった。この障害を低減する培養条件や変異株を検討中である。 2) R.capsulatus野性株のクロマトフォア膜をピメルイミド酸ジメチルで化学架橋し、抗RnfC抗体によって検出される分子量約8万のポリペプチドを確認した。このペプチドは抗RnfB抗体とは反応せず、RnfCと複合体中の他のサブユニットである可能性が高い。RnfCの分子量が約6万であるため、RnfAが有力な候補である。現在、架橋産物を精製し確認中である。 3) 大腸菌mfオペロンホモローグをKoharaライブラリーから得て、T7とtacプロモーターによって発現させるベクターを構築し、大腸菌内での大量発現実験を試みた。しかし、前者では誘導は致死となり、後者では発現が観察されなかった。大腸菌の鉄硫黄クラスタ一生合成に関わるiscオペロンを持つヘルパープラスミドを共存させたところ、発現量の増大が認められた。現在、発現条件を検討中である。また、R.capsulatusのnifHプロモーターを持つ広域宿主ベクターに大腸菌のmfオペロンホモローグを挿入して、R.capsulatus中で発現プラスミドを作製した。R.capsulatusのmf破壊株に導入したが、窒素固定能の相捕は認められなかった。
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