研究概要 |
光合成細菌Rhodobacter capsulatusのrnfABCDEオペロン(rhodobacter nitrogen fixation)は、光照射下における窒素固定に必須な遺伝子群である。私達はrnfの産物が膜蛋白質複合体を構成することを示すとともに、この複合体が,プロトン輸送型NADHキノン酸化還元酵素の膜表在性部分とナトリウム輸送型NADHキノン酸化還元酵素の膜内在性部分の混成構造を持つ,エネルギー共役型NADHフェレドキシン酸化還元酵素であると予言している。本研究では、1)各種変異株に暗所嫌気呼吸条件下での成長能とRnf産物の発現を調べた。その結果、Rnf複合体は暗条件での窒素固定にも必須であり、その機能は光化学反応で得られる還元力を単純にニトロゲナーゼ渡すのではないことが示された。2)野性株とrnf変異株のクロマトフォア膜のEPR解析を行った。その結果RnfBないしはRnfC蛋白質の持つ鉄硫黄クラスターに由来すると考えられるg値1.84のシグナルを確認できた。このシグナルの酸化還元電位は-420mV以下と低いが、Rnf複合体に含まれる4個以上の[4Fe-4S]-クラスターのうち、最も酸化還元電位の高い表在性のものと考えられた。現在、コハク酸-キノン酸化還元酵素由来の強いシグナルに低減して、精密な解析を行うための条件を検討中である。3)大腸菌に存在するrnfホモローグに関してオペロン単位での発現実験を行った。宿主として大腸菌を用いた場合には過剰発現は致死効果を示した。Rhodobacterのニトロゲナーゼ遺伝子のプロモーターを利用した新規な発現ベクターに組み込んで、R.capsulatusのrnf遺伝子破壊株に導入しても窒素固定能は回復しなかった。4)R.capsulatus野性株のクロマトフォア膜をビメルイミド酸ジメチルで化学架橋し、抗RnfC抗体によって検出される分子量約8万のポリペプチドを確認した。このペプチドは抗RnfB抗体とは反応せず、RnfCと複合体中の他のサブユニットである可能性が高い。
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