本研究では、光化学系1複合体のアセンブリーに必須な葉緑体ゲノムにコードされたYcf4タンパクを結合した光化学系1複合体の精製法を開発した。まず、緑藻クラミドモナス(Chlamydomonas reinhardtii)のチラコイド膜を界面活性剤のTritonX-100で可溶化し、ショ糖密度勾配超遠心法で分離した。その結果、主要な光化学系1複合体画分の他に、それより速く沈降する微量の光化学系1複合体画分が得られた。Ycf4タンパクに対する抗体を用いて各画分のウェスタン分析を行うと、この微量な光化学系1複合体画分にYcf4タンパクが存在することが分かった。次に、この微量の光化学系1複合体画分を陰イオン交換カラムクロマトグラフィーで精製を続けたところ、光化学系1複合体を含む2つのピークが分離された。低塩濃度で溶出された画分は混入していた主要な光化学系1複合体画分で、高塩濃度で溶出された画分にはYcf4タンパクが検出された。また、チラコイド膜に存在するほとんどすべてのYcf4タンパクは光化学系1複合体に結合して回収された。 一方、タンパク合成が低下した定常期の細胞のチラコイド膜から同様な精製実験を行ったところ、ほとんどすべてのYcf4タンパクは光化学系1複合体と結合せずに単離された。これは、Ycf4タンパクは新たに合成された光化学系1複合体に結合することを示唆する。本研究により、Ycf4タンパクが光化学系1複合体の分子集合を介添えする「分子シャペロン」の機能を果たしている可能性が示された。
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