研究概要 |
アルデヒド酸化酵素は,植物ホルモンアブシジン酸の生合成の最終段階の反応であるアブシジンアルデヒドからアブシジン酸の生成を触媒する酵素と考えられている.すでに,トウモロコシから2種類の全長cDNAが得られていたので,本研究では,このシークエンスを使ってシロイヌナズナのアルデヒド酸化酵素のcDNAクローニングに取り組んだ.高い相同性を示すcDNA断片が3種類得られ,そのうち2つについては全長のcDNAクローニングに成功した(Sekimoto et al.,1998).植物のアルデヒド酸化酵素は,もう一つの重要な植物ホルモンオーキシンの生合成の最終段階の反応を触媒するとも考えられているため,複数のアルデヒド酸化酵素遺伝子がそれぞれ異なった生理機能をもって生体内で働いていると考えられる.こうした機能を明確にするために,得られているcDNAをシロイヌナズナにセンスおよびアンチセンス方向に導入,発現させそれぞれの酵素の生体内の発現を変える実験を進めている.現在,遺伝子導入第一世代の種子を得るところまで来ている.T3世代の種子が得られたら,その発芽速度や,表現形,ABAとIAA含量,アルデヒド酸化酵素の電気泳動での検出,などを進めることでそれぞれの生体内での機能に検討を加える.また,酵母にも遺伝子を導入し活性を持った状態でタンパク質を生産させ,ABAをよい基質とする酵素を検索するのも進行中である.さらに,それぞれの酵素に特異的な抗体の作成もすすめている.
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