研究課題
基盤研究(C)
細胞性粘菌Polysphodylium pallidumの子実体は、主軸上に輪生した分枝をだして、枝分かれした構造を形成する。我々は、この分枝構造に注目し、この構造が、どのような分子的基礎のもとに、どのような遺伝子産物が、どのような機構で形成されるかについて明らかにすることを目的とした。まず、この生物で挿入突然変異作製法を確立した。次に、この方法を用いて、多数の形態異常の変異体を単離した。その中の一つに、輪生状の枝分かれ構造を全く形成しない突然変異体があり、その原因遺伝子を特定するための実験を行ったが、現在のところその遺伝子をクローン化出来ていない。また、その中の1つに、分岐した枝の長さが長い変異株があり、この原因遺伝子をクローン化し塩基配列を決定して1個のORFを見つけた。また、cDNAを解析することにより、この遺伝子は2個のイントロンを含むことを明らかにした。相向性検索やアミノ酸配列の比較、また膜貫通ドメインの存在とその位置により、この遺伝子にコードされたタンパク質は、分泌タンパク質の小胞輸送に関与しているp24タンパク質ファミリーに属することが分かった。また、ノーザンブロット解析から、この遺伝子は発生開始後8時間目に発現量が最大に達して、その後減少していくことと、変異株ではこのmRNAは全<発現しないことが明らかになつた。また、細胞性粘菌Dicytostelium discoideum のEST中に、この遺伝子のホモログを3個見つけたので、それらの遺伝子のゲノムDNAの塩基配列とcDNAの塩基配列を決定した。その中の1つの遺伝子について遺伝子破壊株を作製し、現在その解析をおこないつつある。
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