1) グルタミン酸デヒドロゲナーセ(GDH)の誘導 前年度に、採集したオオハネモのGDH活性が培養中に上昇することを報告した。今年度はこの活性上昇に対する窒素源の効果を調べた。天然海水および人工海水中で明暗条件下で培養すると、GDH活性は10日後には約1.9倍まで上昇し、その後ゆるやかに1.25倍までに減少した。このとき培地にNH_4Clを加えると、増加が速まった。特に10mM添加したとき、2.65倍までに上昇し、その時期も5日に短縮された。NaNO_3の添加では、活性の増加率は変化しなかったが、最大増加までの日数の減少がみられた。この活性増加は、恒暗条件化ではより大きかった。また、葉緑体GDHの活性上昇にはリン酸化が関係する結果が得られ、活性化の際の細胞内情報伝達経路が示唆された。 2) GDH遺伝子の解析 PCRにより複数のGDH部分遺伝子得て、最大540bpが明らかになった。約420アミノ酸のうち180が明らかになった。また、全構造をふくむファージを得ており、それから直接配列を決めることも試みたが、成功しなかったので条件を検討している。得られた複数の遺伝子から分子系統樹を作成したところ、1つは細菌に近く、もう一方は原生生物に近く、いずれも緑色植物とはかけ離れていた。このことは、緑藻の起源とその後の進化の解釈に多くの示唆を含んでいる。
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