研究概要 |
マメ科植物と環境微生物との相互作用ではたらく機能物質フラボノイドの,生合成経路と調節機構を遺伝子レベルで解明し,植物の環境適応におけるフラボノイドの役割を明確にした. 1.前年度に確立したマメ科カンゾウ(Glycyrrhiza echinata)新培養細胞株を用い,シトクロムP450の一つである2-hydroxyisoflavanone synthase(IFS)cDNAをクローニングした。このタンパク質はフラバノンを基質とし,アリール転位と水酸化反応を行うきわめてユニークな酵素で,イソフラボン骨格形成の鍵酵素である.分子遺伝子学のマメ科モデル植物ミヤコグサからも,フラボノイド合成系のP450cDNAをクローニングした. 2.微生物感染をmimicするエリシター処理により,カンゾウ細胞およびミヤコグサ実生で,IFSを含むフラボノイド系のP450の協調的な発現を確認し,これらがマメ科細胞の防御応答に本質的な役割を演じていることを明らかにした. 3.ミヤコグサおよび他の非マメ科植物の形質転換法を開発し,フラボノイド系の酵素cDNAを導入した形質転換植物による環境応答実験系の作製と,抵抗力の強い植物の育成に向けた植物工学的な試みに着手した. 4.マメ科の代表的なファイトアレキシン(微生物感染に対する防御物質)生合成の中間体formononetin生合成におけるメチル化反応が,2-hydroxyisoflavanone段階で起きることを明らかにした.またマメ科に特徴的な5-デオキシ型フラボノイドを生成するカルコン異性化酵素と,非マメ科型の同アイソザイムが存在することを見出し,酵素の精製を行った.これらの酵素活性の調節と環境微生物応答に強い興味が持たれる.
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