研究概要 |
光化学系II阻害剤結合により誘導されるD1蛋白質の選択的切断 フルオルグルシノール骨格を持つ1群の阻害剤により誘導されるD1蛋白質の切断について、様々な誘導体を用いて研究を行った。D1蛋白質の分解活性発現にはベンゼン環上の2、4、6位に水酸基が存在することが必須であった。また、3位のニトロ基、1位に疎水性側鎖が存在しない誘導体は活性が著しく弱かった。PNO8(N-octyl-3-nitro-2,4,6-trihydroxy benzamide)の場合は、切断はQ_B部位に結合したPNO8により、D1蛋白質のdeループ中のロイシン258近傍1カ所で起こり、23、9kDa断片が生じる。一方、ニトロ基を持たず、6位に置換基を持つ、誘導体(G63)では、16、23kDa断片が生成したが9kDa断片は生じなかった。従って、G63ではPNO8とは異なった部位で切断が起こっている可能性が示唆された。 部分的に阻害された光化学系II酸化側の反応の解析 酸素発生反応が阻害されると、いわゆるドナーサイド光阻害が起こることが知られている。この現象を理解するためには、酸素発生活性が阻害された光化学系IIで起こる反応を理解する必要がある。そこで、Ca除去により酸素発生が阻害された光化学系IIにおける反応を検討した。異常なS_2状態にある光化学系IIをさらに光照射すると、g=2付近に2種類の信号(doublet-like,singlet-like)が観測された。doublet-like信号はS_2状態の1電子酸化により生成し、典型的な有機ラジカル対の双極子交換相互作用由来の性質を有していた。pulsed ENDOR-Induced EPRの測定よりチロシンラジカル(Y_z)の関与が示された。一方、singlet-like信号は2電子以上の酸化によって生成した。この時、Parallel porlarization測定ではg=15、Perpendicular測定ではg=11に新たなEPR信号を見い出した。これらの信号は1種類のスピンセンター(S=2)に対応しており、Mnクラスター由来であると推定された。
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