系II阻害剤結合により誘導される光合成反応中心DI蛋白質の特異的分解

1998 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 09640783
• 研究機関: 理化学研究所
• 研究代表者: 小野 高明 理化学研究所, 光生物研究チーム, チームリーダー(研究職) (10175268)
• キーワード: DI蛋白質 / 光化学系II阻害剤 / 光合成 / 光損傷 / 酸素発生 / マンガンイオン

研究概要

光化学系II阻害剤結合により誘導されるD1蛋白質の選択的切断 フルオルグルシノール骨格を持つ1群の阻害剤により誘導されるD1蛋白質の切断について研究を行った。ベンゼン環上の2、4、6位に水酸基が存在するが、3位にニトロ基を持たず、6位に置換基を持つ、誘導体(G63)は、電子伝達阻害活性がpl_<50>:5.8とPNO8と比較して一桁活性が低いが、PNO8と同様に暗所てD1蛋白質切断活性を示した。しかし、PNO8とは異なり、16kDa断片が主に生成し、その他、PNO8処理では検出されない23kDa断片が検出されたが、9kDa断片は全く生じなかった。系II膜断片を強光処理すると、23kDa断片が主に現れた。また、D1蛋白質の部位特異抗体にたいしても、G63-23kDa断片と強光-23kDa断片は同じ挙動を示した。
酸素発生活 を失った光化学系IIに対するMn^<2+>イオンからの電子供与 酸素発生能を失った光化学系IIを光照射するとYzチロシン、又は酸化還元活性ヒスチジン残基が光損傷を受ける事が、Mn^<2+>イオンが存在するとMn^<2+>イオンからの電子供与が起こり、光損傷が抑制される。Mn^<2+>イオンの結合部位、Yzチロシンへの電子移動を調べた。Mn^<2+>イオンの高親和性部位は系IIあたり1つしか存在せず、この部位にMn^<2+>イオンが結合するときのみ酸化型Yzチロシンへの電子移動が起こった。また結合のpH依存性の解析よりより、ヒスチジン残基が結合に関与しており、1アミノ酸残基のプロトン化により変化することが解った。

研究成果

• [文献書誌] Hasegawa, Koji: "Magnetic propertics and possible structure of the Mn-cluster in an S_2-state photosynthetic oxygen evohing center" Research Report, School of Science and Technology Meiji Univ.19. 77-91 (1998)
• [文献書誌] Hasegawa, Koji: "Simulation of S_2-state Multiline ESR signal in oriented photosystem II membranes:structural implication for the Mn-cluster in an oxygen evolving complex" Biochemistry. 37. 9457-9465 (1998)
• [文献書誌] Mino, Hiroyuki: "Light-induced high-spin signals from the oxygen evolving center(COEC)in Ca^<2+>-depleted photosystem II:a study by dual mode EPR spectroscopy" Biochemistry. 37. 2794-2799 (1998)
• [文献書誌] Ono, Taka-aki: "Magnetic structure of the Mn-cluster in photosynthetic oxygen evolving complex studied by simulation of oriented S_2-state multiline EPR signal" RIKEN Review. 18. 25-26 (1998)
• [文献書誌] Hasegawa, Koji: "Spin-exchange interactions in the S_2-state manganege Letramer in photosynthetic oxygen-evolving complex deduced from gs2 nultiline EPR signal" Chemical Physics Letter. (印刷中).