研究概要 |
本研究ではアラビドプシスにおけるブラシノステロイド代謝の実験系を確立し,それを適用してブラシノライド欠損ミュータントの解析を行なうことを目的としている。研究を開始する直前に,既知のブラシノステロイド欠損ミュータントと形態的に極めて良く似た新規のミュータントを得た。遺伝子レベルにおける予備実験で,ミュータントの原遺伝子は既知のブラシノライド生合成に関わる遺伝子とは異なることが示唆され,このミュータントの解析が急務であることが明らかとなった。そこで本年度はこの新規ミュータントについて生理学的,生物有機化学的な解析を行ないながら,平行して代謝実験系について検討を行なった。まずミュータントにブラシノライド及びその生合成中間体を処理して形態の回復実験を行なったところ,ブラシノライド及びカスタステロンは高い活性を示したが,ティーステロン及びティファステロールは効果が低かった。この結果よりこのミュータントではティファステロールよりカスタステロンへの変換が阻害されている新規のミュータントである可能性が示唆された。さらにミュータントと野生型のアラビドプシスについて,ブラシノステロイドの生合成前駆体となるステロイド類を定量分析したところ,両者に差は認められなかった。そこで現在ミュータント中のブラシノステロイド類の定量を行なうべく,既存の方法をさらに改良した微量分析法の検討を行なっている。微量分析法の開発は代謝実験の結果の解析の際にも鍵となる課題である。なお代謝実験系の検討については,予備的な結果ではあるが液体培地で無菌的に育てた実生を用いた実験系が効果的であることが示されている。今後ミュータントの内生ブラシノステロイドレベルの解析結果に基づき代謝実験を行ない,生合成系における阻害位置について明らかにしてゆく予定である。
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