研究概要 |
異型配偶子接合を行う褐藻ムチモを材料に,受精後の中心子の挙動について電子顕微鏡による連続切片の観察,抗セントリン抗体による間接蛍光抗体法による観察を行った。その結果,ムチモにおいても,中心子は雌配偶子由来の中心子が選択的に消失し,雄配偶子由来のものが残る父性遺伝の機構をとることが確かめられた。その結果,申請者による同型配偶子接合,卵生殖の結果に今回の異型配偶子接合の結果を加え,褐藻植物では種々の有性生殖パターンにおいて中心子は動物細胞と同様に父性遺伝を行うと結論した。 受精後の紡錘体形成については,当初の予定通り褐藻ヒバマタ・エゾイシゲ(卵生殖)を材料として,I)多精受精をさせた場合,II)複数の核を有する卵が受精した場合,III)核を有さない卵細胞が受精した場合,IV)卵核と精核の核融合を阻害させた場合について,抗チューブリン抗体による微小管の観察,並びに抗セントリン抗体を用いのて中心子の観察を併用して行った。その結果,a)中心子は受精後接合子内で新しく形成されることは無くすべて精子由来である,b)中心子は精核近傍から移動することができる,c)染色体凝縮並びに紡錘体形成は精核のみでは起こらない,d)多精受精では多極の紡錘体が形成され,その極の数は基本的には取り込まれた精子の数の2倍である,e)多核卵が受精した場合も多極化した紡錘体が形成されるが,そのうちの2つの極にのみ中心子が存在する,ことなどが明らかになった。
|