研究概要 |
申請者は昨年度,褐藻植物の有性生殖,すなわち同形配偶子接合,異形配偶子接合,卵生殖において中心子(セントリオール)は動物細胞と同様に父性遺伝を行うと結論した。 今年度は同形配偶子接合を行う褐藻カヤモノリを材料に,受精後の中心子の挙動について電子顕微鏡による連続切片の観察,抗セントリン抗体による間接蛍光抗体法による観察を行い,昨年度明らかにした卵生殖を行うヒバマタ・エゾイシゲの場合との核分裂におけるセントロゾームの活性化について比較した。カヤモノリの場合,接合子を高温で培養することにより,核融合が顕著に阻害されることが明らかになったので,雄核と雌核を融合させることなく,接合子を発生させ,それぞれの核において形成される紡錘体について比較検討ができた。その結果,雄核,雌核ともにDNA合成をへた後に,染色体凝縮が起こった。その際,雄核側では正常な紡錘体が形成されたが,雌核側ではまったく紡錘体は形成されなかった。また,紡錘体の極は常に中心子の位置と一致した。この結果は卵生殖を行うヒバマタ・エゾイシゲの結果とは大きく異なる。ヒバマタ・エゾイシゲの場合には卵核と精核の融合を阻害させた場合,両核において染色体凝縮が起こるが,卵核側ではDNA合成が行われているのに対して,精核はDNA合成を行わなかった。また,卵核側では中心子が存在しなくとも単極あるいは2極の紡錘体が形成された。同形配偶子接合と卵生殖では雄核と雌核のクロマチン凝縮の程度が大きく異なるが,それに伴い接合子の核分裂に向けてのセントロゾームの機能分化に違いがあることが示された。
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