原索動物門頭索類ナメクジウオの繁殖現象を生態学的、内分泌学的、分子生物学的に解析することを目的とする。当該年度は研究実施計画に沿って研究をおこなったが、計画的には成果を得られなかった。以下に具体的実施内容を記す。 1.野外および飼育下での繁殖現象の観察:ナメクジウオの繁殖現象を水中ビデオで観察するため、海洋研究所の淡青丸での航海を7月下旬に実施したが、今年は例年になく産卵期が早く終了しており、観察はできなかった。また、成熟した生殖腺を持つ個体を飼育し、1週間の連続ビデオ記録を撮ったが、繁殖行動はみられなかった。採卵して人工授精も試みたが、成功せず、来年度の課題となった。 2.cDNAのクローニング:頭部を集めてcDNAライブラリーを作成した。しかし、内向き整流性K+チャネルのPCR産物を使ったスクリーニングで得られたクローンは5'端が欠け、ライブラリーの再作成が必要となった。一方、生殖腺刺激ホルモンのクローニングは様々なプライマーを設計してPCR法を試みたが、未だに成功していない。そこで、来年度は下垂体原基であるハチエックピットの免疫染色で陽性を示したヒトLH抗体を使ったスクリーニングに切り替える。また、ハチェックのピットを含む部分だけを使ってcDNAライブラリーを再作成する。免疫組織化学の成果として、ハチェックのピットに向かって神経管が延び、この部分にhLH陽性物質の存在が認められた。この部分の立体構造構築から神経管とハチェックのピットとの関係を調べることを来年度は新たな計画として加える。 3.ゲノム遺伝子のクローニング:Dr.Peter W.H.HollandからゲノムDNAライブラリーを贈与されたため、ライブラリー作りはおこなわれなかった。このライブラリーを用いてcDNAライブラリーに代わり、PCR法で生殖腺刺激ホルモン遺伝子のクローニングをおこなっていく。
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