原索動物ナメクジウオの生殖現象の分子内分泌学的研究

1998 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 09640787
• 研究機関: 東京大学
• 研究代表者: 窪川 かおる 東京大学, 海洋研究所, 助手 (30240740)
• キーワード: 原索動物 / 繁殖 / 下垂体 / クローニング / ナメクジウオ / ホルモン

研究概要

1.ナメクジウオの繁殖現象の観察および人工産卵は、今年度もできず、来年度に持ち越された。エルニーニョの終息が予想以上に遅れ、7月末の調査前に行った7月初旬の事前調査でもすでに産卵期が終わっていた。今回初めて1ヶ月齢以上ではあるが、幼生を多数採集でき、幼生の分布調査が出来た。飼育は8ヶ月間続いているが、生殖腺の成熟には至っていない。2.内分泌学的解析から外れるが、採集調査中に興味深い課題があった。ナメクジウオの産卵場の近傍では産卵期が終了したにもかかわらず、残存生殖腺さえ持たない個体しか捕獲できなかった。一方、房総半島沖50kmの水深3,000mの太平洋で浮遊幼生が採集され、日本産ナメクジウオの産卵場所、すなわち供給地と生息地との関係が対応しない可能性が出てきた。そこで、分子生物地理学的研究も合わせて行うために、試料集めを始めることにした。3.下垂体原基で合成されるペプチドのcDNAクローニングは、サブトラクション法によるライブラリーを作成し、既知の下垂体ホルモンの相同部分から作成したプライマーを用いてPCR行ったが、未だに下垂体ホルモン様ペプチドは取れていない。4.下垂体原基の形態学的観察から、左右対称な神経管が、左側にある下垂体原基に向かって伸びており、約20μmの結合組織を隔て近接していることを発見した。しかも、伸びた部分には、下垂体原基で唯一陽性反応を示したヒトLH抗体に対して反応する分泌顆粒の存在が観察された。この神経管の先は、神経下垂体の原基ではないかと推定される。

研究成果

• [文献書誌] Masumi Nozaki: "Evolution of the Pituitary Gland" Natur wissenschaften. (in press). (1999)
• [文献書誌] Aubrey Gorbman: "A Brain-Hatschek's Pit Connection in Amphioxus" General and Comparative Endocrinology. 113. 251-254 (1999)
• [文献書誌] Kaoru Kubokawa: "A New Population of the Amphioxus (Branchiostoma belcheri) in the Enshu-Nada Sea in Japan" Zoological Science. 15. 799-803 (1998)
• [文献書誌] Kaoru Kubokawa: "Isulation of a cDNA for a novel 120-kDa GTP-binding protein expressed in motor neurons in the Salmon brain" FEBS Letters. 431. 231-235 (1998)
• [文献書誌] Yuta Arai: "Cloning of cDNA Encoding the Common Alpha Subunit Precursor Mokcnle of Pituitary Glycoprotein Hormones in the Australian Lungtish,Necreratodus forsteri" General and Conparative Endocrinology. 110. 109-117 (1998)
• [文献書誌] Yuta Arai: "Cloning of cDNAs for the Pituifary Glycoprotein Hormone Alpha Subunit Precursor Molecules in Three Amphibian Species Bufo japonicus,Rare catesbciana and Cynopus pyrrhogacter" General and Conparative Endocrinology. 112. 46-53 (1998)