研究概要 |
脊椎動物の身体を支える脊椎骨がいかに形づくられていくかは,興味あるテーマの一つである。個体発生の過程においては,出現する分節構造(体節)に始まる軟骨・骨形成の「場の提供」と「形成過程」を考える必要がある。ところが,「増殖・分化といった形成過程」については,それぞれの細胞レベルでの研究成果は着実に蓄積しているものの,個体としてどのようなメカニズムによりバランスを保ちつつ弯椎骨が作られていくのかは,未だ全体像がみえていないのが現状である。我々はこれまで,ニワトリの脊椎にメラトニンのレセプターが存在すること,また孵化後すぐのニワトリ(卵用品種)の松果体を除去すると椎体形成に異常が生じ,脊柱変形(側弯)が約7割の個体に生じることを見出してきた。しかし,側弯の発生率が7割程度であることから,脊柱変形のメカニズムを明らかにするために,卵用品種を用いることは望ましくない。そこで本年度は,卵用品種に比べて体重増加が速く骨異常が生じやすいと考えられる肉用品種(ブロイラー)を用いて,松果体除去後経日的に脊柱の変形度を調べた。また合わせて,どの様なメラトニン投与法方が脊柱変形を抑制できるかどうかも調べた。 その結果、松果体除去後約2週間で、ほぼ100%の個体に10度以上の脊柱側弯が認められ、日令が進むと重度に変形した個体が出現した。また、メラトニンの投与方法としては、2群を設け実験を行った。すなわち、持続的に血中メラトニン濃度を高く保つ目的で、メラトニン入りチューブを皮下に植え込んだ群と、メラトニンを1日一回2mg/100g体重注射した群を作製した。その結果、両実験群ともに松果体除去群よりも脊柱の側弯発生率が減少し、側弯の進行も有意に抑制されることが明らかとなった。また脊柱変形抑制度などにおいて、両実験群間に大きな差は認められなかった。
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