研究概要 |
脊椎動物の身体を支える中軸骨格である脊柱がいかに形作られていくかは,非常に興味深いテーマである。現在初期発生に関しては,主としてホメオボックス遺伝子群の解析といった研究が盛んに行われているものの,いったんできた場にどのようなメカニズムにより,全体としてバランスを取りながら軟骨・骨が形成されて,正しい脊柱が形作られていくのかは,ほとんど分かっていない。本研究で用いている松果体除去ニワトリ脊柱変形モデルは,脊柱形成過程の後期のメカニズムを,個体レベルで調べるのには非常に優れたモデルである。昨年我々が報告した松果体除去ブロイラーの系は,孵化後2日以内に除去手術を行うと,2週令で100%の個体に脊柱変形が認められる。一方,これまで用いてきた採卵鶏(レイヤー)では,2ヶ月経っても約7割の個体にしか脊柱変形が認められない。 そこで本研究では,その原因を明らかにするために,ブロイラーの系を用いて体重増加と脊柱変形との関連を調べた。60%体重群,80%体重群を作製し,対照群と比較したが,脊柱変形の発生率や変形度に有意な差はなく,この松果体除去後に生じる脊柱変形はブロイラーに本質的に生じやすい現象であることを明らかにした。次に,松果体除去後の脊椎骨と血液中のCa濃度を調べたところ,松果体除去後比較的初期の段階で骨Ca濃度は有意に減少し,一方血中Ca濃度は有意に上昇することが分かった。そこで飼料に約3倍量のCaを添加し,松果体除去後の脊柱変形を調べたところ,有意に抑制された。以上のことは,松果体除去後に発生する脊柱変形の原因の一部にCa代謝が関与していることを示している。
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