研究概要 |
(1)昨年度に引き続き,ヨシキリザメとアブラツノザメの下垂体からゴナドトロピン(GTH)を単離・同定する試みを続けているが,今だ単離に至っていない。さらに検討を加え,単離を急ぎたい。(2)昨年度の研究で,トラザメでは,GTHもサイロトロピン(TSH)も下垂体腹葉に存在することを報告した。今年度は,トラザメに加え,ホシザメやコモンカスベについても関連ホルモン抗体とレクチンを用いて調べたが,いずれの種も,腹葉管状構造の外側細胞がGTH抗体とTSH抗体の両方に反応し,GTH細胞とTSH細胞を区別することができなかった。各種レクチンを用いた結果も同様であった。これらの結果は,板鰓類ではGTHとTSHが分化していないか,あるいはGTHとTSHが同じ細胞で生産分泌されている可能性が高いことを示唆している。(3)板鰓類の生殖周期や成長に伴う視床下部-下垂体-生殖腺系の変化を調べるため,各種サイズのトラザメを約300匹入手し基礎データを得た。雌雄とも,全長38-40cmで生殖腺重量が急増することからこの頃思春期に至ること,成熟メスでは季節に関係なく卵黄形成中の卵がみられることから,明瞭な産卵期をもたないことなどがわかった。(4)板鰓類の下垂体腹葉には下垂体門脈系の血管も視床下部神経の侵入もみられないことから、視床下部のゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)がどのような経路で腹葉に至るか謎に包まれている。我々は,GnRHは主として神経葉から放出されて一般循環を得て腹葉に至るとの仮説を立てている。現在,この可能性を検討するため腹葉組織の移植実験や血中GnRHを特異的抗体で中和する実験などを進めている。以上のように,本年度は継続実験中のものが多く充分な成果をあげるに至らなかった。平成11年度は,本研究の最終年度にあたるため,来年度中に研究をまとめることができるようなお一層努力したい。
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