研究概要 |
マウス子宮は,性周期や妊娠などの生理状態の変化に応じて,その構造と機能を著しく変化させている.これらの変化は,発情ホルモンや黄体ホルモンや成長因子等が協同してはたらくことにより制御されている.マウス子宮内膜では,発情ホルモンによりインスリン様成長因子I(IGF-I)の合成と分泌が促進され,放出されたIGF-Iが傍分泌的または自己分泌的に上皮細胞や間質細胞に作用すると考えられた.本研究では,この仮説を検証し,子宮内膜における細胞増殖と機能発現に関する情報伝達機構を解明することを目的とした. 1.IGF-Iの発現とその調節機構の解析 子宮内膜におけるIGF-Iの産生細胞の同定を,免疫細胞化学的手法および,RT-PCRによりIGF-ImRNAの局在を調べることによりおこなったところ,子宮内膜の上皮細胞,間質細胞の両細胞でIGF-Iの合成が確認された.さらに,間質細胞の初代培養系を用いて,IGF-Iの合成・分泌を調節する因子を検索したところ,発情ホルモンによりIGF-Iの合成が高まった. 2.IGF-Iの受容体の発現とその調節機構の解析 子宮内膜におけるIGF-I受容体の発現細胞の同定を,RT-PCRによりIGF-I受容体mRNAの検出により調べたところ,IGF-I受容体が上皮細胞,間質細胞の両細胞に存在することが確認された. 3.IGF-Iの細胞内のシグナル伝達機構の解析 IGF-Iは上皮細胞の増殖をin vitro系で促進する.上皮細胞成長因子(EGF)が上皮細胞の増殖を促進することを確認した.IGF-IとEGFを同時に投与したとこと上皮細胞の増殖に相加的な効果が認められた. 以上の結果より,子宮上皮細胞または間質細胞で合成されたIGF-Iが上皮細胞に作用して細胞増殖を高めることが示唆された.
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