哺乳類の生殖腺形成を支配するSF-1/Ad4BP遺伝子のcDNA(2.1kb)と転写調節領域(4.6kb)を哺乳類以外の脊椎動物(ツチガエル)から初めて単離した。両生類SF-1/Ad4BPは468のアミノ酸からなり、牛との相同性は62%であった。ツチガエルの成体組織では精巣、脳、脾臓及び副腎で発現していた。しかし、卵巣では発現していなかった。転写調節因子の塩基配列は、両生類と哺乳類では著しく異なっており、同じ遺伝子でも動物によって転写調節領域が異なる可能性があることが分かった。in situハイブリダイゼーション法によって、精巣のセルトリ細胞で発現することも見出した。 次に、SF-1/Ad4BPとアミノ酸配列の類似領域があるFTZ-F1はショウジョウバエの体節形成に必須なFTZ(fushi tarazu)遺伝子の転写調節因子であることが知られているが、両生類(ツチガエル)からFTZ-F1 cDNA(2.1kb)を単離した。この遺伝子の構造解析を世界で初めて行い、FTZ-Fは少なくとも8つのエクソンから成ること、ひとつの遺伝子から2種のFTZ-F1mRNA(α、β)が形成されて異なる2種の蛋白が合成されること、タイプαは変態後の精巣で極めて強い発現を示すことを見出した。in situハイブリダイゼーション法とFTZ-F1ペプチド抗体を用いた組織免疫染色法によってFTZ-F1は生殖細胞の初期分化に何らかの役割をもつことも見出した。 更に、哺乳類の生殖腺形成に必要なSox9cDNAを両生類から初めて単離した。脊椎動物のSox9には2つのアイソフォーム(α、β)があることを世界で初めて見出した。Sox9α、βは482或いは265のアミノ酸からなり、いずれも発生初期(st.12)から発現するが、哺乳類及び鳥類のように生殖腺分化時には雄特異的に発現せず、雌雄いずれにも発現していた。現在、転写調節領域(20kb)を単離し、その塩基配列を解析中である。
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