本年度、テッポウユリ花粉内の雄原核(雄性配偶子の前駆核)に多量みられるH1様ヒストン変種の1種(p35)ならびにヒストンH1(p43;対照)に対する抗血清を用いて、テッポウユリ花粉発生過程の各ステージにある細胞を間接蛍光抗体法によって染色し、両抗原の分布を調査したところ、対照としたヒストンのH1が常に核内の核小体を除くクロマチン部分に分布するのに対し、p35はその局在を大きく変化させることが確かめられた。減数分裂の前期細胞や減数分裂後の一核性花粉細胞において、p35は核小体に局在するが、不等細胞分裂の直前になるとヒストンH1と同様核小体以外の核全体に分布するようになり、分裂期では染色体全体に分布した。次いで、不等分裂直後の二細胞性花粉では、核小体以外の両核全体に分布した後、発生が進むと、雄原核全体に多く分布するするようになり、栄養核では核小体に一時的に局在した後消失した。以上のように、p35は、花粉発生過程におけるクロマチンの形態分化において、特異な挙動を示す核タンパク質であることが示された。 また、従来の核小体染色法である銀染色の結果とは必ずしも一致しないことから、p35は新規の核小体タンパク質であるとともに、イムノブロッティングの結果から、p35類似タンパク質が高等植物に広く存在している可能性が示された。 現在、p35のcDNAを単離中であるとともに、DNAとの結合能を解析中である。
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