高等植物の新規核小体タンパク質の可能性が示唆されたテッポウユリのp35について、アミノ酸の部分配列を手がかりにしたPCR法によって、その全長cDNAを単離した。その結果、予想されるアミノ酸組成ではリジン含量が約25%であるとともに、アミノ酸の部分配列においていくつかの高等植物のヒストンH1と高い相同性を示した。したがって、p35はヒストンH1の変種であると推察された。 抗p35抗血清を用いたイムノブロット検定では、p35類似タンパク質の存在が示唆された種がある一方で、ヒストンH1との区別が明白ではなく、その普遍性を確定することはできなかった。また、細胞周期の進行に伴うp35の動態をタバコ培養細胞BY-2を用いて調査したところ、有意な差が認められず、その機能を類推するには至らなかった。ただし、核小体内の一部に局在することがいくつかの種で明らかになったので、核小体の何らかの機能に関わると予想され、その詳細な局在を明らかにすることが当面の課題と考えられる。 一方、被子植物の花粉発生過程では、雄原核と栄養核の顕著なクロマチンの形態分化が起こることが知られているが、栄養核クロマチンの分散(弛緩)化にはヒストンH1の選択的な消失が関与することが示された。また、ヒストンH1の変種である上記のp35も、雄原核ではさらなる蓄積がみられるのに対し、栄養核では消失することから、クロマチンの形態分化に密接に関わっている可能性が示唆された。
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