研究概要 |
昨年度までに、テッポウユリの雄原核に特異的あるいは豊富に存在する4種類のヒストン変種のcDNAを単離し、それらの相同性からそれぞれをgH1,gH2A,gH2B,gH3 と命名した。これらヒストン変種のクロマチン内でも存在様式や機能を探るために、まず単離した雄原核を塩やヌクレアーゼで処理することによって、DNAとの結合度やヌクレオソーム構造との関係を調査したところ、それらはそれぞれ体細胞型ヒストンH1,H2A,H2B,H3と類似した性質を示すことが明らかになった。 そこで次に、個々の遺伝子を GFP と接続し、エレクトロポレーション法やパーティクルガン法によって各種細胞に導入することによって、その細胞内での移行を調査した。その結果、同じユリ花粉に導入した場合は栄養核クロマチンへの速やかな移行がみられたのに対し、タバコ培養細胞 BY-2 やタマネギ表皮細胞へ導入した場合、gH2Bは核小体へ、gH2A と gH1 は核と核小体の双方への移行が認められた。間接蛍光抗体法によって gH1は核小体に局在することが確かめられているが、本結果から、gH1 に限らず他のヒストン変種も核内において体細胞型ヒストンとは異なる機能を有する可能性が示唆された。また別に、雄原核クロマチンと核小体クロマチンの類似性が示唆され、テッポウユリで見出したヒストン変種が他の植物種でも同様に存在し機能している可能性がより強調された。
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