研究概要 |
本研究はユ-グレナの葉緑体形成過程における光化学系II・集光性クロロフィルa/b結合タンパク質複合体(LHCP II)の輸送における塩化リチウムの効果を免疫電顕法により追跡したものである。 暗培養したユ-グレナを無機培地に移したのち、培養液中に塩化リチウムを添加し、温度26℃、1500 luxの光照射をおこなった。光照射直後を0時間として経時的にクロロフィル、カロテノイド量を測定すると24時間後0.30pg/cell, 0.59pg/cell(対照0.38pg/cell, 0.59pg/cell)、48時間後0.65, 0.79pg/cell(対照2.33, 1.14)であった。すなわち、24時間までは著しい抑制効果がみられた。電子顕微鏡により、プラスチド構造を観察すると24時間では、2〜3枚のチラコイド膜が形成され発達はみられず電子密度の高い物質がプラスチドの周辺とゴルジ装置に蓄積された。次に、温度を16℃で培養するとクロロフィル、カロテノイド量は24時間後0.06pg/cell, 0.34pg/cellを示し、塩化リチウムと同じような現象がみられることが判った。ユ-グレナのLHCP IIは細胞核にコードされ細胞質で合成された後、ゴルジ装置を経由し葉緑体に輸送される。塩化リチウムを添加し、24時間光照射後の細胞を抗LHC II抗体、protein Aゴールドで処理し免疫電顕法で観察すると、LHCP IIはCOS構造と細胞核とに局在することが判った。すなわち、ゴルジ装置にその局在は見られなかった。48時間細胞では、LHCP IIはゴルジ装置、プラスチド、COSに局在がみられ細胞核には観察されなかった。 以上の結果から、LHCP IIのゴルジ装置への輸送を阻害するとLHCP IIは、細胞核およびCOS構造に局在することが明らかになった。
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