研究概要 |
(1)卵成熟誘起ホルモン(1-メチルアデニン)の生成過程の解明 1-メチルアデニン(1-MeAde)生成過程の研究では、繁殖期のイトマキヒトデ卵巣から調整した卵濾胞細胞に[^<14>C-methyl]メチオニンあるいは[U-^<14>C]アデニンまたは[U-^<14>C]アデノシンを取り込ませたトレーサー実験により2つの新事実が得られた。すなわち、S-アデノシルメチオニン(SAM)が1-メチルアデニン(1-MeAde)のメチル基供与体であったこと(J.Reprod.Develop.1997,43:99-100;Dev.Growth & Differ.,印刷中)とATPが1-MeAdeの前駆体であったこと(Dev.Biol.,投稿中)である。しかし、ATPが直接SAMよりメチル化されるかについては、定かではなく今後の課題である。一方、SAMを加熱処理することで化学的に1-MeAdeが合成されることが新たに見出された(Comp.Biochem Physiol.,印刷中)。SAMはATPとメチオニンから生合成されることから、SAMから酵素的に1-MeAdeが生成される可能性もある。 (2)細胞接着因子の免疫組織化学的解析 卵母細胞を一層に取り囲む濾胞細胞は互いに強く結合している。今年度はその細胞接着因子と考えられるATP-diphosphohydrolase(ATPDase,apyrase)について部分精製を行った(Zool.Sci.,印刷中)。イトマキヒトデ卵濾胞細胞のATPDaseは細胞膜表面に最も強く活性が見出され、ATPやADP以外にもGTP,CTP,GDP,CDPなど広くヌクレオシド三リン酸や二リン酸を基質にした。Km値はATPとADPを基質にしたとき、それぞれ0.17mMと0.20mMであった。分子量については細胞膜画分をジギトニンで可溶化した後、Superose6によるゲルろ過カラムクロマトグラフィーによって求められ約60,000と推定された。今後、レクチンカラムやイオン交換カラムによる手法を用いて、酵素の精製をした後、さらに、その抗体を作り、免疫組織化学的にATPDaseの濾胞細胞表面上の分布を明らかにしたい。
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