研究概要 |
1 1-メチルアデニンの生成過程 繁殖期のイトマキヒトデ卵巣から調整した卵濾胞細胞に[^<14>C-methyl]メチオニンあるいは[U-^<14>C]アデニンまたは[U-^<14>C]アデノシンを取り込ませたトレーサー実験により、新たに2つの事実が得られた。すなわち、1-MeA生合成の直接のメチルドナーがS-アデノシルメチオニン(SAM)であったこと(Mol.Reprod.Develop.,発表予定)、およびアデニン骨格がATPに由来していたことである(Drug.Develop.Res.,1998,43:64;Biochim.Biophys.Acta,発表予定)。また、本研究によりSAMを加熱処理によって化学的に1一MeAdeが合成されることが見出された(Zool.Sci.,1998,15:117-122)。 2 1-メチルアデニン生成機構と細胞接着因子 イトマキヒトデ卵濾胞細胞の細胞接着因子の候補としてATP-diphosphohydrolase(ATPDase,apyrase)の部分精製を行い、その性質の一部が明らかにされた(Comp.Biochem.Physiol.,1998,119B:577-588)。しかし、ATPDaseのもつATPアーゼ活性の生理的役割については不明だが、卵形成期において、個体レベルとしては異物として認識される卵母細胞に対して濾胞細胞表面上にあるATPDaseがマクロファージなど免疫担当細胞から防御している可能性がある。 その他、1-MeAの作用機構について、12種類のN^1置換アデニン類を化学的に合成し、ヒトデ卵成熟に対するアゴニストおよびアンタゴニストの作用を調べた。その結果、1-MeAレセプタータンパクに対する相互作用において、分子内の電荷ばかりでなく、N^1置換基の立体的位置関係が重要であることが明らかにされた(Zygote 1998,6:147:帝京短期大学紀要1999,印刷中)。
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