ウミユリ巻枝の構造についてについて、電子顕微鏡と光学顕微鏡により調べた。巻枝の関節面は平らで、中央に突起があり、その中央を貫通して中央神経と体腔が通っている。関節の反口側と口側に靭帯がある。靭帯にはコラーゲン繊維とミクロフィブリルとが観察できた。筋細胞はない。juxtaligamental cell(jc)の枝が平行に入り込んでおり、cell with bullet-shapedorganelle(BSO細胞)の枝もある。jcの細胞体は靭帯の末端が骨片に入り込んでいるところに存在していた。 中央神経は中心部に神経があり、その周辺部をBSO細胞が取り巻いている。中央神経は各骨片において4本の分枝を出し、各枝は細かく枝分かれして骨片のpore space中を走り、網目状に骨片全体に分布している。銀染色により神経は濃く、BSO細胞は薄くと染め分けができ、BSO細胞も同じように網目状に走っていることが分かった。jcの細胞体とBSO細胞の枝とは密接に接触しているように見えた。BSO細胞は機能不明の細胞であるが、神経系の一部として靭帯の硬さ変化や収縮に関与していることが示唆された。 関節面の研磨標本を作り形態を調べたところ、体腔上皮の細胞にたとえ収縮能があったとしても、これが関節の曲げ運動をおこすことは不可能なことが明らかとなった。収縮は靭帯そのものにより引き起こされるという昨年度の結果が、形態学的にも支持された。 ウミユリ類の結合組織の収縮と比べる意味で、これらの筋肉はどのような収縮性をもつのか、ウミシダの腕を用いて調べた(驚くべきことに、ウミシダの筋収縮の報告はいまだかつてない)。収縮は高濃度のカリウムイオンを含む海水と、非常に高い濃度のアセチルコリンによって見られ、アドレナリンによりKの収縮は抑制された。Kによる収縮は結合組織によるものよりもずっと速かった。
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