研究概要 |
昨年度に作成したRab2,Rab6,Rab10,Rab11,RabRP4に加え、Rab8およびRab14の変異体も作成した。これらのハエについて、変異蛋白質の発現にるRab蛋白質の機能阻害の影響を、オプシンのプロセシングおよび電子顕微鏡による組織形態の観察により検討した。その結果、Rab2およびRab11がゴルジ体以後の小胞輸送に関与していることがわかった。その結果、昨年度のRablの結果とも合わせ、粗面小胞体からゴルジ体を経て光受容部位に至るロドプシン輸送の経路を明らかにすることができた。 これら合成輸送系に加え、更に、視細胞におけるエンドサイトシスの経路についても検討を行った。従来、細胞膜からライソゾームに至るエンドサイトシス経路にはRab5が関与するといわれてきた。そこで、この変異体を用いて光照射後に起こる光受容膜の取り込みを調べたところ、変異体ではエンドサイトシスにより生じる多胞体の数が大きく減少していることが分かった。これに対し、シナプス結合部位で、やはりエンドサイトシスにより起こるシナプス小胞の再形成は、変異体において全く阻害されないことがわかった。この結果により、視細胞内には異なる2つのエンドサイトシス経路が存在することが明らかとなった。 ショウジョウバエの視細胞では、青色光照射により、特徴的な感桿膜の崩壊が起こる。形態的にこれと非常によく似た崩壊がRab11を強くかつ継続的に発現させた場合に観察された。この変異体では感桿分体の形態異常も観察されることから、光信号伝達系と受容蛋白質・膜の代謝系のクロストークがこの分子の近傍で起こっている可能性が示唆された。
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