本研究は昆虫の光周反応において、複眼や単眼による光受容がどのくらい一般的かを検討するため、いくつかの昆虫および近縁の節足動物であるオカダンゴムシにおいて光周反応に関与する光受容器を明らかにすることを目的とする。本研究は実験に用いる種を野外で採集し、実験条件下の飼育方法を確立し、それぞれの虫の基本的な光周反応を明らかにする第1段階と、複眼・単眼を切除する、焼きつぶす、あるいは銀を含んだ塗料で覆うことが光周反応に及ぼす効果を調べる第2段階からなる。今年度の第1段階の研究では、オカダンゴムシ成体が20℃では長日条件でのみ生殖を継続し、短日条件では成長や脱皮は続くものの生殖が抑制されることが明らかになった。また、過去の研究によって既に報告されていたオオクロナガオサムシ幼虫の長日型光周反応が確認された。チャバネアオカメムシでは第2段階の複眼・単眼の切除実験を行い、本種の光周反応において複眼が主要な光受容器として機能し、単眼は関与しないことが明らかになった。他にモリチャバネゴキブリ・アカスジキンカメムシの幼虫複眼を切除することが光周反応におよぼす効果を調べる実験の結果は、例数が少なかったり結果がばらついていたりして、その解釈がはっきりしない。今後、これらの実験を継続するとともに、今年度第1段階の終了したオカダンゴムシ成体において複眼切除または塗りつぶし実験、オオクロナガオサムシ幼虫において側単眼切除実験を試みたい。
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