本研究は光周反応において、複眼や単眼による光受容がどのくらい一般的であるかを検討することを目的としている。陸生甲殻類のオカダンゴムシ成体において、まず光周反応の性質を明らかにした後、複眼の除去実験を行い、複眼が光周反応に関与している可能性のある結果を得た。同じく、オオクロナガオサムシ幼虫の側単眼の除去実験を行い、側単眼が光周性に関わっていることが示された。しかし、どちらの種も手術後の死亡率が高く、十分な数が得られなかった。そして、モリチャバネゴキブリ幼虫の複眼切除実験とアカスジキンカメムシの幼虫複眼の塗りつぶし実験は、結果がばらついていたために結論を下すことができなかった。これらについて、今後さらに実験を継続する必要がある。 チャバネアオカメムシでは、光周反応において複眼が主要な光受容器として機能しており、単眼は関与しなかったが、複眼・単眼以外の光受容器も関わっていることが明らかになった。さらに、すでに光周反応の受容器として複眼が使われていることを既に私たちが明らかにしているマダラスズとルリキンバエについて、概日歩行活動リズムのエントレインメントに関わる光受容器を同じ方法で検討した。その結果、どちらの種においても概日時計には複眼とそれ以外の受容器の両方からの情報が入力することがわかった。チャバネアオカメムシの光周反応、マダラスズとルリキンバエの概日リズムに関わる複眼以外の受容器は特定していないが、これまでの研究から脳内に存在すると推定できる。これらのことから考えて、脳の光受容器はかなり広い範囲の昆虫に存在しており、光周反応において複眼と脳の光受容器のどちらを採用するか、あるいはその両方を使うかは、種ごとに違っているようであり、一般的な法則はないと考えられた。
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