研究概要 |
本年度は、概日時計入力系に関与すると考えられるコリン作動性網膜外光受容器(eyelet)の構造と機能をさらに調べるために、免疫組織化学的方法を用いて解析を行い、次の結果を得た。1.ショウジョウバエの複眼および単眼の光受容細胞では、これまでに6種の視物質(オプシンRh1〜Rh6)遺伝子の存在が明らかにされている。本研究では、抗-NINAE(Rh1),-Rh4,Rh5,-Rh6抗体を用いる免疫電顕法により視物質の検索を行い、eyeletの光受容細胞のラブドームが、抗-Rh6オプシン抗体によって特異的に標識されることを明らかにした。Drosophila Rh6の分子構造は,ミツバチの緑色域に感度を持つ視物質に類似することなどから,eyeletは緑色光に分光感度を持つ可能性が推測できる。2.Rh1オプシンの発現異常に起因して個眼の周辺視細胞Rh1-Rh6のラブドームが変性するninaE突然変異体(ninaE^<ora>,ninaE^<l17>)では、eyeletのラブドームには変性は認められなかった。この観察は、eyeletがNINAE抗体で標識されず視物質はRh1ではないという免疫組織化学的結果と対応する。3.個眼の中心視細胞R7を欠如するsevenless突然変異体のeyeletでは,ラブドームの微細構造に異状はみられなかった。このことから、eyeletの光受容細胞はR7と起源を同じくするものではないと考えられる。4.eyeletの発生学的起源に関しては、(1)幼虫光受容器は,蛹期に退化し成虫ではみられないこと,(2)eyeletは4個の受容細胞からなる。一方,幼虫光受容器は12個の細胞から構成されていること,(3)sine oculis突然変異体の成虫にはeyeletは存在するが、この変異体の幼虫には光受容器が見られないこと,などを根拠として、eyeletは幼虫光受容器に由来するものではないと推測される。
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