マメ科ヌスビトハギ連における、花序、花および果実の形態の多様性と進化傾向を明らかにするため、形態学、解剖学および発生学的解析を行った。 ヌスビトハギ連の総状花序と偽総状花序との構造的つながりを調べた。総状花序をもつナハキハギ属では、花が花序軸のいずれの方向にも配列する「らせん配列」のもの、背軸側に偏って配列する「背軸側偏向配列」、さらに、背軸側偏向配列の後にらせん配列にかわる「移行型」がみられた。偽総状花序をもつその他の属では、花序の主軸につく包葉に抱かれる部分花序で花が「背軸側偏向配列」あるいは「移行型」配列となることから、総状花序は偽総状花序の部分花序と相同であると推察できる。したがって、偽総状花序は総状花序をだく葉が包葉に退化することにより進化した可能性がある。 ヌスビトハギ連でみられる単純型と破裂型の2つのタイプの花の構造を調べた。その結果、破裂型では竜骨弁に突起構造が生じ、この部分で翼弁と強く接着し、開花までの間に竜骨弁の方が翼弁よりも接着部位から基部までの長さが長くなることが明らかになった。これらの構造により、2つの花弁基部に張力が生じ、破裂が引き起こされることが判明した。分子系統解析の結果と比較したところ、破裂型は単純型から花内蜜腺を失いながら進化したことが明らかになった。 分類学的に未整理であったオセアニア地域のナハキハギ属で花部形態を詳しく比較し、有効な分類形質を見いだした。その結果、既存の種の輪郭が明瞭になり、新たな種を識別することができた。 3亜連25属68種について果実の解剖学的および発生学的解析を行った。果皮の厚壁組織の位置、厚さ、および分布パターンに注目すべき多様性が認められ、節部に5タイプ、それ以外の部分に5タイプの果皮構造を識別した。これらのタイプを比較した結果、Alysicarpus属が最も特徴的で進化した果皮構造をもつことが明らかになった。
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